現役でスポーツをやっている男と比較すれば、当然俺よりも小さい。それは自然なことで、彼女自身が特別小さいわけではない。それは先日のショッピングデートで知った服のサイズが九号と平均的だったことが裏付けている。単純に俺の身長が高く、鍛えているから体格がいいから小さく感じるだけ。
並んで歩くには、歩幅を狭めて歩く必要がある。でもそれは女性相手であれば、大抵はそうなる。けれど、話す声がすごく遠く感じたり、首が痛くなるような身長差を感じたことはない。いつだって目線より少し下に彼女のつむじが見えるくらい。
「え、
「んー、どうしたの?」
だから、いつも危なげなく履いたハイヒールを脱いだ彼女がこんなに小柄だなんて予想外だった。俺の身体ですっぽり多い隠せてしまう気がして、ちょっとの怖さとたっぷりの庇護欲が同時に顔を出して困惑する。
「えーっと、思ってたより小柄だったから驚いた」
ぼちくりと瞬きを繰り返す彼女に、俺は頬を掻いて誤魔化す。形容しがたい感覚を、適切に言語化する術が浮かばない。
「いつもヒールだったもんね」
所謂はじめてのお家デート。廊下を先に進んでいた彼女は、ああ、と小さくして頬をゆるめた。
「うん」
「ヒールがないと、剣優くんがいつも以上に逞しく感じるよ」
弓なりに目を細めた彼女は含みを持たせた言い方をする。その仕草にしっかりと想いを掻き立てられてしまった俺は、本能的に彼女へと腕を伸ばしていた。
「ねえ、抱きしてもいいかな?」
「どーぞ」
両腕を広げた彼女を引き込んで、抱きしめる。やっぱりすっぽりと俺の腕に収まってしまった彼女。まるまる頭ひとつ分小さいし、俺と違って角と固さのない感触に、またわずかな恐怖とたくさんの愛情が湧き上がってくる。
きゅう、と音を立てた胸のときめきは、体中に甘い連れを運ぶ。
「潰れちゃいそうだよ」
「全然潰れないょ」
腕の中で小刻みに震えた彼女はご機嫌そのもの。擦り寄ってまた空気を揺らして笑う彼女の振動が、身体に伝わるのが擽ったい。
「それでも、もっと俺を頼ってほしいな」