BridgeOfStardust

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 早起きをして完璧なメイクを施す。右を向いて、左を向いて、隙がないのを確認したらキープミストをくまなく振りかけた。
 髪のひと束ひと束を丁寧に巻いて、まとめ上げる。最後に日常では使うことのない煌びやかなヘアドレスを装着して、ドレッサーの前から立ち上がる。
 この日のために選び抜いたアクセサリーとドレスを身に纏い、コートを羽織って、いつもより高いヒールに足を通す。
 コツコツと軽いヒールの音をテンポよく鳴らして、エントランスホールに着けば、外には見慣れたSUVがすでに停車していた。
 ヒールのテンポを上げて車へと駆け寄る。すぐさまウィンドウを小さくノックしてからドアを開ける。
 助手席越しに目が合った英太は、ふにゃりと目尻を垂らした。バシッと決まったネイビーのスーツと華美すぎないヘアセットにその笑顔は反則技だ。

「かわいい」

 その上で惜しげもなく捧げられる賞賛に、心が大暴れする。好きだと大声で愛を叫びたくなる。

「英太もかっこいい」

 そんな言葉では足りない。絞り出すようにした褒め言葉にも、はにかんでくれる英太くの笑顔がとびっきり眩しくて、目が眩む。

「サンキュ!ほら、」

 いつまでも乗り込まないわたしに痺れを切らした英太が、そっと助手席のシートを叩く。その手つきが優しくて、愛おしさが膨れる。

「ついに崎山も結婚かあ」

 同級生同士のカップルの挙式へ、英太の運転で向かいながらしみじみと振り返る。着いて離れてを繰り返していたふたりも身を固めた上でみんなに祝福されるところまで幸福の階段を上り詰めた。
 そう思うと感慨深いものがある。

「次は誰だと思う?天童とか牛島くんとかどうなの?」
「次かー……」

 英太は近況を聞いているかもしれない、友人の顔を思い浮かべる。SNSをチェックしていても彼らはそう言った色を匂わせないから、どうなのだろうか。

「俺らでもいいんじゃねえ?」

 視線が一瞬だけ車線からわたしへと移動した。あからさまに顔色を窺うそれに、硬直した脳がゆっくりと動き出す。

「……まじ?」
「大マジ」

 ムニムニと唇を動かして、居心地悪そうにサイドミラーへ視線を逃した英太を食い入るように見つめた。
 そして、逡巡。
 高校時代の片想いを経て、大学で忘れ去ろうとして、成人式で再会して、友人関係を深めながら恋心が息を吹き返して。遠回りをした恋は思ったよりもあっさりと実って早くも四年。そろそろそういうことを視野に入れていないこよもない。

「まあ、ありかも」

 悪くない。そう結論づけて声を溢せば、ぐりん、と音が聞こえそうな勢いでこちらを向いた英太。その頬を指先で押しやって、「前見て」と、安全運転を促す。けして照れ隠しなんかではない。
 それでも隙を見てわたしの表情を窺おうと、落ち着きのない英太の態度がくすぐったい。溢れ出る喜びに頬をゆるめてしまう。

「じゃあ期待しといて」
「うん」



結婚式に参列してきたので書いてみた