燦々と日差しが降り注ぐ。人々が行き交う雑踏から抜け出すようにして、カフェの扉を潜る。たちまち鼻腔を擽るコーヒーの香ばしい香り。
待ち合わせまでの時間を涼んで過ごせればいいと思って立ち寄った。それなのに、空席を探すよりも、メニュー表よりも、レジ横のショーケースよりも、先に目に飛び込んで視線を釘付けにされた。女性相手に接客中のレジ係の人に。
はにかむ笑顔がすごく印象的で、目が離せない。なにか個性の強い特徴があるわけではないと思う。ごく自然な接客なはず。
呆然とその人を見つめていたら、当然視線がかち合うわけで。驚きで心臓がバクバクと音を立てる。
「ご注文はお決まりですか?」
突然現実に引き戻される。ハッとした時にはもう遅くて、その人は俺を見つめながら首を小さく傾げた。
「え、あ、はい! いいえ!」
慌てたまま口を開けば、いつまでも未熟な返事が飛び出す。
目を丸めたその人は、一度瞬きをして小さな笑いをこぼす。それがなんだか恥ずかしくて、途端に惨めさが心にシミを作った。
「お決まりになったらお声掛けください」
「じゃあ、アイスティーで」
「かしこまりました」
レジを打つその人を見つめながら、この高揚感に似た感覚を思い返す。小さな巨人をテレビで見つけた時、かっこいいシューズを見つけた時、それらにすごくよく似ていた。