BridgeOfStardust

はじまりの落下点(一目惚れシリーズ1-1)

 テスト前期間で全ての部活が活動を禁止されている。いつもなら朝練に励んでいる時間に起きて、あくびを噛み殺すこともなく学校へ向かう。
 学校の最寄駅には同じ制服の生徒で溢れていて、見知った顔がいないかとぐるりと視線を巡らせた。
 男ばっかの学校で女子生徒というのは、時にその小ささに埋もれて、時に貴重さに目立つ。ひとりの女子が単語帳を捲りながら構内を歩く後ろ姿が目に止まる。クセのないまっすぐな髪が背中で揺れていた。

「っきゃ!」

 突然、何かに躓いた女子は手の届く距離ではなく「あーあ」なんて内心で他人事の感想をこぼす。
 あれはコケるな、と思ったのにグッと体勢を立て直した。そして翻って太ももを覗かせたスカートの裾を慌てて手で押さえる。
 咄嗟に周囲を確認したことでようやく顔が認識できた。見覚えがないけれど、うっすらと施された化粧で上級生であることが窺えた。羞恥に頬を染めて、顔を隠すように髪をすく仕草が、どうしようもなく心をうずつかせる。
 揶揄いたい。声をかけたい。他の男から向けられた好奇の視線から隠してしまいたい。

「体感すげーっスね。運動部?」
「え、」

 消えない周知と新たな戸惑いで揺れる瞳が俺をとらえた。



二口堅治は年上とか関係なくからかいにいきそう